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ハサミ男  作者:殊能将之 出版社:講談社文庫

・ミステリー小説が読みたいと思って買った。面白かった。最後のどんでん返しには見事にやられた。読んだ後にもう一回読みたいと思った。読んでて没頭してるときが一番面白く感じて読み終わるとすこしがっかりしてしまう時もよくある。
二回の殺人を犯しているハサミ男が自分と同じ手口で殺されている現場に偶然出会い、誰が殺したんだ、という疑問を持って、探偵役になって真犯人を探しながら話が進む。登場人物は主人公のハサミ男、刑事の人たち、と誰か分からない真犯人なのだが、この人たちの行動と考えをなぞってストーリーが進んでいき、その間に気づくと登場人物たちの気持ちと同化して、ちょっとドキドキできる。これがこの本の一番面白いと思った部分。だから先が気になるし読んでて、そうだよな、、、って登場人物やその状況を自分だけが分かった気持ちになれる。みんな世間の人たちは分かってないんだよ。と。なんていうんだろ、登場人物の気持ちになって自分が正しいんだって思える。すごい能力をある人を見てすごいな面白いなという風に感心すると同時にその人たちと自分との同じ感覚を見つけてはちょっと優越感に浸れたりする。
刑事が手がかりを掴んだら、やったぞ、という気持ちになるし、同時にハサミ男の気持ちになって今回は俺じゃないのに捕まっちゃうのか、捕まったら無実を主張しても自分が殺したことになるのかな、なんだよ。とちょっと悔しい気持ちになったりもする。
特にこの話ではハサミ男の心情で進んでいくシーンが多いのでそれがまたハサミ男の側に感情輸入させやすいように書いていて面白い。二人も女子高生を殺して何の反省もしてないのに人間的には魅力的に感じる、ハサミ男は二重人格であってその二人の人格の違いも納得できておもしろい。最終的には私よりも医師のほうが読み手に近くなるような逆転具合もハサミ男の印象を強くしていると思う。読み終わったあとも考えることができる本は面白い気がする。ミステリーの謎が単純なだけにその仕組みのうまさに感心した。